今は作成者と杉本様の間でレビューのループが回っています。
このループをAIに移し、杉本様が見るのは一定水準に達したものだけにします。
提案書がどう流れ、AIが何を判定し、どこで人に渡るか。
基準を一行書き換えると、同じ資料の判定が変わります。この仕組みの中身が基準であることを、そこでご確認いただきます。
AIの判断そのものは同じです。違うのはAIの外側 ─ 組織で回るかどうか。
技術ではなく、この三点が決まれば動き出せます。
提案の採否を決めるのはAIではありません。AIが判定するのは「人に見せてよい状態か」だけです。
1 / 8性能を決めるのはAIではなく、左側に置く基準です。
杉本様が普段見ている観点を文書にしたものが、そのまま中身になります。
体制図、スケジュール、見積根拠、リスク記載などの有無。ここは機械的に判定でき、AIを使わずに検出できます。
数値の根拠、見積・工数・期間の不一致、流用資料に残った旧案件の情報。断定はせず、確認すべき箇所を挙げます。
顧客や上長が突くであろう論点を十問ほど。基準を通過した資料にだけ付き、レビュー会の材料になります。
| 条件 | しきい値 | 意味 |
|---|---|---|
| 点数 | 実測で決定 | 有効な観点の充足度。この点数は決め打ちではなく、過去の判断から逆算します(4ページ目) |
| 必須項目 | 欠落 0件 | 一つでも欠けていれば、点数にかかわらず通過しません |
| 事実・整合性 | 指摘 0件 | 数字の食い違いを残したまま顧客に出さない、という一線です |
基準の叩き台はこちらで用意しています。白紙からお願いすると止まるためです。杉本様には赤入れをしていただきます。
2 / 8左が基準、右が判定結果です。左を書き換えると、右がその場で変わります。
タブで1回目・2回目・3回目の周回を切り替えられます。
杉本様が普段見ている観点です。文言の書き換え、行の追加と削除ができます。チェックを外すとその項目は見なくなります。
この点数を超え、かつ必須項目の欠落と事実・整合性の指摘がゼロのときだけ、杉本様のもとへ届きます。ここの80点は仮の値です。実際にどう決めるかは次ページでご説明します。
| 周回 | 日時 | 点数 | 判定 | 主な指摘 |
|---|---|---|---|---|
| 1回目 | 8/26 10:12 | 61点 | 作成者へ差し戻し | 差別化、リスク記載の欠落 |
| 2回目 | 8/26 15:40 | 78点 | 作成者へ差し戻し | 差別化がなお未記載 |
| 3回目 | 8/27 09:05 | 89点 | 杉本様へ送付 | 見積根拠に確認事項 |
この記録が貯まると、毎回同じ項目で止まっていることが見えてきます。それは教育で潰すべき項目であり、基準そのものの改善材料にもなります。
3 / 8点数そのものに意味はありません。意味があるのは、杉本様の過去の判断と、どれだけ一致するかです。
80点は初期値であり、第一段階の二週間で実測値に置き換えます。
通過の条件は三つのANDです。このうち必須項目の欠落と、数値の食い違いは「記載があるか」「二つの数字が一致するか」を見るだけなので、機械的に判定でき、実行のたびにブレることがありません。前ページのモックで通過を分けたのも、点数ではありませんでした。
| 周回 | 点数 | 必須項目の欠落 | 数値の食い違い | 結果と、止めた理由 |
|---|---|---|---|---|
| 1回目 | 61点 | 2件 | 2件 | 差し戻し ─ 「なぜ当社か」「リスク」の記載なし |
| 2回目 | 78点 | 1件 | 1件 | 差し戻し ─ 「なぜ当社か」がなお記載なし |
| 3回目 | 94点 | 0件 | 0件 | 通過 |
ブレるのはAIの性能ではなく、問いの立て方です。総合的な評価を求めると答えは揺れ、事実の確認を求めると揺れません。基準は右の列の形で書きます。
| 避ける ─ 答えが揺れる問い | 採用 ─ 答えが揺れない問い |
|---|---|
| この提案書を100点満点で採点してください | 体制図に稼働率の記載がありますか。あれば該当箇所を挙げてください |
| 差別化が書かれているか | 競合との違いが、固有名詞または数値を伴って書かれているか |
| リスクが十分か | リスクが3件以上、それぞれ対策とセットで書かれているか |
| 課題設定が適切か | 課題が、顧客の発言の引用か提供資料の記述に基づいているか |
第一段階の二週間の作業の実体は、上の表の右列を作ることです。AIを調整するのではなく、基準の文言を締めていく作業になります。
4 / 8第一段階で、過去に杉本様が差し戻した資料10本と、そのまま通した資料10本をAIに採点させます。
両者の分布が分かれる位置が、通過ラインです。こちらが決めるのではなく、過去の判断が決めます。
この20本は説明のための想定値です。実際の分布は第一段階で、御社の過去資料から測ります。ここでお見せしているのは数字そのものではなく、どう決めるかという手順です。
基準に達していない資料が杉本様のもとへ届きます。門番として失敗している状態で、これが続けば負荷は減らず、仕組みが信用されなくなります。
作成者に一往復の手戻りが出ます。指摘は具体的なので直す作業自体は短く、資料の質はむしろ上がります。
| 指標 | 測り方 | 判断の基準 |
|---|---|---|
| 一致率 | 過去20本について、AIの判定と杉本様の判定が一致した割合 | 8割を下回るなら、基準を作り直します |
| 見逃し | AIが通したが、杉本様なら差し戻していた件数 | 0件に寄せる。出たら通過ラインを上げます |
| 空振り | AIが止めたが、杉本様なら通していた件数 | 2〜3割までは許容します |
| 再現性 | 同じ資料を3回投入し、判定が一致するか | 割れた観点は、基準の文言を締めます |
| 通過ライン | 見逃しが0になる最小の点数 | これを初期設定として採用します |
この五つが出せなければ、第二段階に進むべきではありません。止めどころを第一段階の終わりに置いているのは、そのためです。
5 / 8AIがやっている判断そのものは、まったく同じです。
チャットに基準を貼り付けて資料を投げるのと、システムが同じ基準で判定するのとで、出てくる指摘の質に差はありません。違うのは、AIの外側です。
| AIチャットで運用 | システム化 | |
|---|---|---|
| AIの判断精度 | 同じ | 同じ |
| 基準の中身 | 同じ | 同じ |
| 使うかどうか | 本人次第 | 提出フローに組み込まれる |
| 基準の所在 | 各自のプロンプト | 一箇所で管理・版管理 |
| 出力の形 | 毎回変わる | 固定 |
| 記録 | 残らない | 全周回が残る |
| 投入されたもの | 把握できない | ログで追える |
| 手間 | 1本あたり10分前後 | 提出するだけ |
チャット運用は「使いたい人が使う」形です。忙しいとき、急ぎのとき、自信があるときに飛ばされます。そして飛ばされた資料が杉本様のところに来るので、負荷は減りません。
提出フローに組み込めば、AIを通さないと杉本様に届かない。現場が意識するのは提出先が変わることだけです。
チャット運用を20人で始めると、20個の違うプロンプトができます。標準化どころか、属人化が一段深くなる。
基準が一箇所にあり、そこを書き換えれば全員に反映される。これが「組織に反映する」ということです。この仕組みの本体はAIではなく、基準を一箇所に置くことだと言えます。
チャットには何も残りません。誰が何回差し戻されたか、どの項目が繰り返し引っかかるか、が見えない。
記録が残れば、毎回同じ項目で止まっているなら、それは教育で潰すべき項目だと分かります。基準そのものも改善されていきます。運用しているだけでデータが貯まる、というのがシステム化の副産物です。
前ページのモックで動かしていただいた基準の編集は、システム化するとこの一箇所が全員に効きます。チャットでは、各自の手元に20個の写しができます。
6 / 8「AIを入れると危ない」ではなく、「チャット運用のほうが危ない」という話になります。
ここは説明の順番として重要です。
| チャット運用 | システム化 | |
|---|---|---|
| 何を投入したか | 把握できない | 全件ログ |
| 投入してよい範囲 | 個人の判断 | ルールで制限 |
| 顧客名の扱い | そのまま貼られる | 自動でマスキング可 |
| 監査対応 | 説明できない | 記録を提示できる |
チャット運用で十分な場合もあります。月に数本しかない、使うのが1人だけ、標準化する必要がない ─ この条件なら、システム化は過剰投資です。
だからこそ第一段階はあえてチャット運用にしています。まず基準を作り、2週間試して、精度の見込みを立てる。そこでダメなら投資を止められます。システム化が必要になるのは、「これは全員に使わせたい」と判断できたときです。判断する前に作らない、というのが進め方の要点です。
「AIの賢さは、チャットでもシステムでも変わりません。同じことを聞けば同じ答えが返ります。
違うのは、組織で回るかどうかです。チャットだと使う人と使わない人が出て、飛ばされた資料が杉本様のところに来る。基準も人によってバラバラになる。記録が残らないので改善もできない。
ですから最初はチャットで構いません。まず基準を作って、2週間試してください。それで効くと分かってから、全員に使わせる形にすればいい。
順番を逆にすると、使われない仕組みができます。」
この整理を先に出すと、「AIツールの売り込み」に見えなくなり、セキュリティの懸念に正面から答えられ、第一段階の意味が伝わります。
7 / 8技術ではなく、この三点が決まれば動き出せます。
順番も、この通りです。
この仕組みの精度を決めるのはAIの性能ではなく、左側に置く基準です。杉本様が普段見ている観点を文書にしたものが、そのまま中身になります。叩き台はこちらで用意しました。白紙からお願いすると止まるためです。
過去に差し戻した事例を十件ほど、ご提供いただけますか
提案書には顧客の課題や構成が含まれます。社内規程だけでなく、顧客とのNDAに第三者開示の制限があるかが実際の判断軸になります。なお必須項目のチェックだけであれば、外部に一切出さずに実現できます。
生成AIの利用規程と、NDA上の制約をご確認いただけますか
Microsoft 365 か Google Workspace か、社内でお使いのものに合わせます。窓口はメール、フォルダ投函、チャットのいずれでも構いません。仕組みの中身は共通で、窓口は後から差し替えられます。ここは最後に決めて問題ありません。
社内の主要なグループウェアはどちらでしょうか
| 段階 | 期間 | 形態 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 第一段階 | 二週間 | チャット運用 | 基準の叩き台に杉本様が赤入れ。この時点で、精度が見込めるかどうかの判断ができます |
| 第二段階 | 一〜二か月 | システム化 | 杉本様の手元で運用。周回数や指摘内容が記録として貯まります |
| 第三段階 | 以降 | 組織展開 | 営業部へ展開。開発側の技術提案書にも適用 |
まずは第一段階の二週間から。基準が機能するかどうかを、作る前に見極めます。判断する前に作らない ─ それがこの進め方の要点です。
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